廣八堂の葛辞典 -Dictionary of Kuzu-
私の家に来られたお客さまに、手づくりの葛ねりを召し上がっていただくと、ほとんどの方が「葛ってこんなにおいしかったのですか」と驚かれます。 伝統的な原材料でつくられたものは、すべて「…ってこんなにおいしかったのですか」という言葉を口に出させる魅力を持っています。この言葉を聞きたいがために、私たちは本物の葛にこだわってきたのかもしれません。 葛に限らず、和菓子や日本料理の原材料の多くは、古来より日本文化の一端を担ってきました。 近年では国産に代わって外国産のものが多く出回るようになりましたが、やはりその土地で育ったものはその土地固有の味を出すものです。 そもそも風味とは、風土の味のことだからです。伝統の原材料が消滅することは、ひとつの日本文化が消滅することにも等しいのではないでしょうか。 私たちの使命は、先人から受け継いだ葛の魅力を後世にしっかりと伝えていくことです。そしてそのことが、日本古来の文化を守ることにつながるものと自負しております。 廣八堂では、和菓子や日本料理を愛する方にご満足いただける、安全で品質の高い葛粉のご提供はもとより、より多くの方に満足いただける製品開発にも取り組んでいこうと考えています。 「本物はおいしい」そのひとことをたくさんの方からお聞きするために。
秋の七草のひとつとして知られている葛は、マメ科の多年草。
夏から初秋にかけて紫紅色の花を可憐に咲かせ、山野・荒地に多く自生しています。蔓の長さは10メートル以上にも達し、繁殖力は旺盛で地下にはイモ状の巨大な塊根を作ります。
根は、食用や漢方薬に、葉は家畜の飼料に、蔓は布の繊維に、花は民間医療の素材にと古来より余すところなく活用され日本人の暮らしに深い関わりを持ってきました。
中でも葛からとれる本葛粉は、きめ細かく質の高いでん粉で、独特の風味・粘り・透明感があり、貴重な食材として活用されます。また素材の旨味を引き出す力もあり、様々な分野で重要な役割を担っています。
本葛粉は今また、日本伝統の和菓子・料理とともに、洋菓子の材料としても注目されています。